日本赤十字社 武蔵野赤十字病院

内科専攻医研修プログラム内科専攻医
研修プログラム

  1. 内科専門医研修プログラムの理念と使命 特性
  2. プログラムの概要 コース別プログラム
  3. 専攻医の到達目標
  4. 集専攻医数 診療実績
  5. 臨床現場での学習
  6. カンファレンス/症例検討会等
  7. リサーチマインド/学術活動の研修計画
  8. 地域医療研修について
  9. 研修の評価時期と評価法
  10. 研修終了認定
  11. サブスペシャリティ研修に関して
  12. 研修管理委員会について
  13. 指導者研修について
  14. 専攻医の研修環境/労働環境
  15. 内科専攻医研修プログラムの改善方法
  16. 内科専門研修の休止・中断、プログラム移動について
  17. 武蔵野赤十字病院内科専攻医研修施設群の資料

1. 本プログラムの理念 使命 特性

武蔵野赤十字病院内科系専攻医研修プログラムは、武蔵野赤十字病院を基幹病院として、青梅市立総合病院、がん研有明病院総合腫瘍科、調布東山病院内科、桜町病院内科ホスピス科と協力しながら、初期臨床研修では十分深められなかった医学的知識、診療技術を学び、実践し、初期研修医で学んだ医療や医学をさらに深く広く進め、主治医として主体的に診療に参加するためのプログラムである。
初期臨床研修では担当医の一人として指導医と共に診療し、指導医の病状説明を聞きながら学んだが、内科系専攻医研修では主治医として主体的に診療する。初期研修のごとく相談しながら診療計画を立てるのではなく、診療計画立案/実施後に報告して上級医や指導医のアドヴァイスを受ける。病状説明や面談でも主体となって説明し、他診療科医師や他職種とも積極的に協議して診療を進める。さらに、初期研修医を指導しながら診療する。時には、看護師やコメディカルも指導しながら診療を進める。

さらに本プログラムでは、高齢化社会で遭遇する多数の領域に障害を発症した患者への対応、自宅での独居生活に支障がある患者の在宅調整や転院調整を主体的に参加して多職種のスタッフと連携を深め、地域医療についての学びをさらに深める。また、地域での在宅医療や慢性疾患の患者教育指導など急性期病院では経験できない医療も経験する。それらの研修、経験を通して医師としての人格をさらに涵養しするものとする。

また、当院の属する日本赤十字社の事業の一つとして災害救護活動がある。災害救護現場での医療は専門医療ではなく総合的な判断と対応が必要であり、初期研修で内科、外科、小児科、産婦人科、救急診療科など各科を広く研修した若手医師が、その経験を生かしてステップアップするのに相応しい場とも考えられる。当院の内科系専攻医研修プログラム期間に、災害医療が専門の救急救命部長の指導の元に、災害医療についての研修会/講習会/訓練に参加し、実際に救護班にも属して、救護班出動の機会があれば同行し、救護スタッフの一員としての活動を体験する。本プログラムは日本内科学会が作成した新・内科専門医制度研修カリキュラムに則り、経験すべき疾患群に該当する症例・技能や、研修手帳を中心とした評価法なども、学会作成の研修ガイドラインを十分満たすもので、本邦の他の医療機関とも十分共有可能なものである。

2. プログラムの概要

研修期間は原則として3年間である

1年目:武蔵野赤十字病院総合診療科を中心とした内科系全般に亘る診療、多数の併発症を有する患者様の全身管理、内科系一次・二次救急の対応を実践する。武蔵野赤十字病院は救急車搬入台数が7000~8500件あり、その多くが内科系2次救急である。内科系の救急車当番を定期的に担当する事で、様々な内科系緊急疾患への初期対応を経験できる。総合診療科には手術や抗癌剤治療適応外の進行癌がしばしば緊急入院するため、緩和ケア科の指導の元で、苦痛緩和ケアや終末期医療について研修する。
また、内科系専門診療科を1〜3科を2〜6ヶ月ローテートし、上級医/指導医の元で主治医となって専門診療を学ぶ。また、専門領域の救急医療にも参加する。癌患者が入院する診療科では緩和ケアの指導受ける。
自己研鑽以外に初期研修医の教育・指導も行い、初期研修医を指導しながら入院患者診療や救急車当番などを担当する。さらに週1回の総合診療科外来を担当し、外来診療や地域医師会との病診連携などについても研修する。

2年目:武蔵野赤十字病院内科系専門診療科での研修をする。癌患者の入院する呼吸器科では同時に緩和ケア科の指導も受ける。また、神経内科でも非癌性慢性疼痛の患者を担当する際には、緩和ケア科の指導も受ける。
また、研修協力施設で一般内科の研修を実践し、さらに内科系専攻医としての研鑽を積む。特に調布東山病院では内科系全般におよぶ幅広い研修をし、地域医療を通じて地域の特性にあった医療を体験する。小規模病院では夜間の専門診療科当直はないので、時には内科以外の救急疾患への対応を求められる事がある。そのような都市部の基幹病院では経験できない医療を体験することで、医師としての力量をさらに向上させる。
武蔵野在院期間中は内科系の救急車当番は継続して担当する。
2年目の最後には、新内科専門医試験に必要な症例数200例を確保する事を目指す。提出すべき29症例のサマリーも完成させ、新内科専門医受験資格に備える。

3年目:武蔵野赤十字病院内科系専門診療科、青梅市立総合病院内科系専門診療科/がん研有明病院で専門研修をさらに深める。3年目は多数の診療科を回るのではなく、一つまたは二つの領域を長期間研修し、専門領域の知識と経験を深める。
3年目も内科系救急診療を担当するが、内科系専門診療科領域の専門救急対応もできる能力を身につける。3年目終了後は新内科専門医の資格取得をめざす。

3年間を通して災害医療が専門の救急救命部長の指導の元に災害医療を学び、災害医療の研修会/講習会/訓練に参加し、救護班に属して出動機会があれば災害医療を体験する。

専攻医の2年終了時には、日本専門医機構の認定する新内科専門医の受験資格を得るために十分な症例数を経験できる。そして3年目の専攻医終了時には、新内科専門医資格試験を受験する事が可能である。
そして新内科専門医取得後、その先の内科系専門領域の専門医を取得に備え、その領域の専門医試験に必要な症例を、専攻医期間の3年間に多数経験し、サマリーを作成しておく事も可能である。

この3年間の専攻医期間に、各種の研究会、症例検討会、内科学会、内科系各専門学会で発表する機会を得られ、症例報告の論文執筆も可能である。

4年目以降も武蔵野赤十字病院および関連医療機関でスタッフとして医療を続けたい場合は、各医療機関の事情を鑑みて個別に対応する。

本プログラムの研修施設

  • 武蔵野赤十字病院
  • 青梅市立総合病院
  • がん研有明病院
  • 桜町病院
  • 調布東山病院

本研修では、以下のとおり2通りのプログラムを用意している

各プログラムの特徴は以下のごとくである。

プログラムA
内科系全般を深く研修するコース
プログラムB
内科系専門診療科研修を取り入れたコース

各プログラムでの研修の実際は次ページのごとくである。

プログラムA(内科系全般を深く研修するコース)

以下の先生にお勧め

  • 新内科専門医取得を考えているが、その先の専門分野を決めかねている
  • とにかく最初の5年間は内科全般をきっちり学びたい
  • 将来家庭医(総合診療専門医)ではなく、病院総合診療医を考えている
    • 総合診療専門医とは地域で内科、小児科、地域保険、在宅管理などを中心とした幅の広い医療を担う医師で、現状の家庭医(開業医)に相当します。
    • 病院総合診療医とはHospitalistのことで、教育研修病院のような総合病院で、複数臓器に及ぶ病態を有し専門診療科では対応困難な症例や内科系二次救急医療が必要な症例を対象に医療を行います。特定臓器ではなく全身管理を主体として、専門診療科と協力しながら診療を行います。また、内科の初期臨床研修教育として内科全般の臨床教育を担当します。

(プログラム例)
1年目

総合診療/リウマチ膠原病救急救命科循環器消化器 緩和ケア
4ヶ月2ヶ月3ヶ月3ヶ月
 

2年目

神経内科感染腎臓内科調布東山/桜町病院内科 緩和ケア
3ヶ月1ヶ月2ヶ月6ヶ月
 

3年目

呼吸器 緩和ケア血液内科 緩和ケア腫瘍科 緩和ケア内代内科選択
3ヶ月2ヶ月2ヶ月2ヶ月3ヶ月
 
3年間内科系救急車当番 災害医療も研修(どのコースも必修)
 

内科の基礎である、呼吸、循環、消化器を3ヶ月、齢社会で増加する脳血管障害を考慮し神経内科も3ヶ月とした。 また、高齢者で増加する腎障害や血液悪性腫瘍や癌患者の管理を2ヶ月、どの領域にも関係する感染症、糖尿病などの代謝疾患も1ヶ月間集中して学ぶようにした。 総合診療科で内科系全般の緊急入院に対応する他、3年間を通じて救急車対応を担当し、内科系の殆どの救急に対応できる臨床能力を身につける。さらに3次救急のみの研修を救命部で2ヶ月間行う。 調布東山/桜町病院内科で半年間内科全般の研修を行う。これは、それまでの研修を発展させ、内科医としてのさらなるステップアップを図るためである。

呼吸器内科、消化器内科、血液内科、腫瘍内科には悪性腫瘍が多数入院するため、担当中に緩和ケア科の指導を受けながら、緩和ケア医療をしっかり学ぶ。

プログラムB(内科系専門領域研修コース)

進みたい内科系専門分野が決まっている先生にお勧め

1. 2. 3年 内科選択研修
  • 1年次から専門分野の研修をすることが可能。
  • 3年間のうち、専門医機構が定めている連携医療機関での研修を6ヶ月は必須。また、総合診療科をある程度ローテートする。
  • 総合診療科ローテートで70疾患群のうちのかなりの疾患群の研修が可能なため、残りの期間を専門研修に割くことが可能。

(プログラム例)循環器科重点コース
1年目

循環器科総合診療科
6ヶ月6ヶ月
 

2年目

循環器科連携病院研修
6ヶ月6ヶ月
 

3年目

循環器科
6ヶ月
 
  • 3年間内科系救急車当番などを担当し、あらゆる救急に対応できるよう研修する
  • 2年目以降は研修状況を見て循環器当直に組み入れることも考慮する

内科専攻医の週間スケジュール例

総合診療科ローテート時

 午前午後夕方
新患カンファ救急当番病棟回診/処置 内科合同カンファ
CPC リスクカンファ
夕方チーム回診
午後出勤病棟回診/処置ER当番初期研修医勉強会
救命科中心
夕方チーム回診
新患カンファ診療科
カンファレンス
病棟回診/処置 初期研修医勉強会
感染症科中心
夕方チーム回診
新患カンファ診療科回診病棟回診/処置 初期研修医勉強会
総合診療科中心
夕方チーム回診
救命救急科
合同カンファ
総合診療科外来病棟回診/処置 初期研修医
症例検討会
夕方チーム回診
     
   ER当番 
 
  • 毎朝早く初期研修医が前夜に緊急入院した患者を診察し、病歴をまとめて朝の新患科ファレンスでプレゼンテーションをする。その新患カンファレンスに出席し、質問/評価/指導を行う。月曜日の朝は金/土/日で新患が8〜10名いることがあるので、研修医が分担するよう前もって指導する
  • 前夜の緊急入院患者の主治医となり、初期研修医を指導しながら診療する
  • 毎日夕方に初期研修医、指導医と共にチームカンファレンスをする
  • 週1回 総合診療科外来を担当する
  • 救急車当番を週2〜3回担当し、内科系救急診療を研修する
  • 救急車診療では初期研修医をコールして教えながら診療する
  • 週1回、17〜23時までの救急車当番を担当する 当日は午後出勤
  • 総合診療科ローテート時は毎週夜間のER当番があるため、日当直には入らない
  • 月1回、土曜日か日曜日のER当番を担当する
  • 夕方の各種カンファレンスや勉強会に出席し、講師も担当する

3. 専攻医の到達目標

全体目標:GIO : General Instructional Objective

本プログラムの目的は、若手医師がこの研修を受けることで内科系医師としてのスキルを身に着けるだけではなく、医師として社会人として地域社会や医学界との関係性を深める中で、その問題や課題に取り組む姿勢を身に着け、将来の我が国の医療の担い手としての土台を形成することである。

武蔵野赤十字病院内科系診療科は医師数が75名を超え、内科系の高度専門医療を実践していることから、本プログラムでは高度専門医療を学び、経験することもできる。また、研修協力施設がその地域や専門領域において極めて大きな役割を担っている医療機関であることから、そこで研修することで医師としての見識や医学知識をさらに深め、地域医療や専門医療の貴重な経験を多数することが、さらにキャリアアップ可能である。

本プログラムは内科系専攻医のためのプログラムであるから、従来の3年目にすぐに内科専門診療科に属してスペシャリストを目指すコースではなく、将来の新内科専門医にふさわしい全身をしっかり診ることのできる専門医の基礎をつくるためのプログラムである。

行動目標:SBOs:Specific Behavioral Objectives

新内科専門医では内科系各領域に対する医学的知識・医療に精通していることを目指しているほか、地域医療も実践する事が求められている。内科学会提示した専門研修後の成果では、到達目標として以下の4つが期待されている。

  1. かかりつけ医として医療を担当;地域での内科診療を担当して、内科の慢性疾患に対して生活指導まで含めた健康管理・予防医学を実践する。
  2. 内科系救急医療を実践する
  3. 病院総合内科医として内科系全領域の疾患を担当
  4. 総合内科的視点をもった内科専門領域の医師としての医療の実践

したがって、将来の新内科専門医取得をめざす本プログラムでは、上記1)に対応するべく、2年目に調布東山病院/桜町病院にて地域包括ケアなどを実践できる期間を6ヶ月も受けている。
3年間を通じて内科系の救急当番を担当することで、到達目標の2)は十二分に達成できる。
到達目標の3)に関しては、1年目に総合診療科での総合内科研修を6ヶ月実践し、さらに循環器内科、消化器内科、呼吸器内科、脳神経内科、血液腫瘍科、内分泌代謝科、腎臓内科の研修で、2年終了時には内科学会で求められた45疾患群120症例は優に経験でき、最終的に求められている70疾患群200症例以上の大部分を2年終了時に達成できるプログラムである。

3年目は、到達目標4)の総合内科的視点を有する内科専門領域の診療を実践するために、内科系専門診療科で長期間専門研修ができる期間を設けた。循環器内科、消化器内科、呼吸器内科、脳神経内科、腎臓内科、血液内科、腫瘍内科、緩和ケア内科、内分泌代謝科、感染症科、リウマチ膠原病科なども選択研修可能であるが、病院の状況に応じて個別にその都度相談になる。

具体的なSBOは以下のごとくである

  1. 日常診療で内科医として診療する機会の多い疾患や病態について理解する
  2. その病態を速やかに把握し、適切な検査を行い診断する能力を身につける
  3. 診断に必要な検査を想起し、専門医に相談する能力を身につける
  4. 適切な治療法を選択する能力を身につける
  5. 必要時に専門医と協議する能力や専門医を紹介する能力を取得する
  6. 診断や治療に関して、積極的にコメディカルと協議する能力を身につける
  7. 診断に必要な知識を文献的に検索できる能力を身につける
  8. 疾患の経過・予後予測がある程度できる能力を身につける
  9. 治療に伴う有害事象の予測と対応法を身につける
  10. チーム/診療科内で適切なプレゼテーションをする
  11. 診療計画/治療計画についてスタッフと協議する能力を身につける
  12. 適切な抗菌薬使用法を学び実践できる
  13. 耐性菌、院内感染・地域の感染対策を理解した抗菌薬使用を身につける
  14. 疾患、治療、予後、有害事象等について、患者や家族のわかり易い言葉で説明できる
  15. 診療に参加するスタッフの指導/教育が出来る能力を身につける
  16. 適切な紹介状を作成し、地域医療機関に適切な継続診療が依頼できる
  17. 地域のスタッフと連携して在宅調整ができる
  18. 地域医療を実践し、内科的慢性疾患の対応や患者指導を身につける
  19. 地域のケアマネージャーや訪問看護師と連携して地域包括ケアを実践する
  20. 緩和ケア研修で苦痛緩和ケア、終末期医療に対する理解と技術を習得する
  21. 災害救護を学び災害医療を身につける
  22. 学会や研究会で適切な症例発表ができる
  23. 経験した症例をまとめて問題点やその解決法、新知見などを見いだして発表する能力を身につける

4. 募集専攻医数

本プログラムの募集専攻医数は3〜4名である

研修コースには以下の二通りある

  1. 3年間で内科全般を深く研修する総合内科研修コース
  2. 3年目に専門診療科を主として研修するサブスペシャリティ研修コース

研修開始後の変更は、全体に大きな影響が出ないよう協議しながら考慮する

領域別/診療科別入院実績は以下のごとくである

当院の領域別入院数(平成26年度)

領域入院数領域入院数
消化器3,248循環器2,409
呼吸器1,879腎臓736
感染症674神経604
血液436代謝/糖尿病300
アレルギー/膠原病181内分泌129
 

内科系診療科別入院数(平成26年度)

領域入院数領域入院数
消化器内科2,184循環器内科1,839
呼吸器内科1,146総合診療/リウマチ754
腎臓内科412血液内科323
脳神経内科265内分泌代謝科246
腫瘍内科208感染症科39
 

5. 臨床現場での学習

臨床現場では患者さんから学ぶ事が第一であり、繰り返し患者さんの元に足を運ぶ。また、他科コンサルト時もできるだけ患者さんと一緒に行き、専門医の診察を学び、専門医とディスカッションする。

  1. 主治医として入院患者診療を担当し、かつ担当医である初期研修医を指導しながら診察し、診療計画を立てる
  2. 患者診療上必要な処置は指導医に報告した上で、自ら実施するか自分がたちあって初期研修を指導しながら処置をする
  3. 指導医と相談しながら、患者、家族への説明も主体的に行う
  4. 多職種カンファレンスに積極的に参加し、診療チームのリーダーとして行動する
  5. 在宅調整会議に参加し、地域の医療スタッフの実情を学びながら協議する
  6. 週1回以上の総合診療科定期外来を担当して、通院診療を研修する
  7. 救急車当番を担当し、救急搬送される患者の診療を担当し、研鑽する
  8. 救急外来診療を担当し、夜間や日祭日の救急外来診療を研鑽する
  9. 病棟日勤/夜勤を担当して、主治医以外の入院患者の臨時診療を担当する
  10. 内科専門領域の検査を研修し、一人で検査ができるよう研鑽を積む
  11. 定期的に開催されるモーニングカンファレンスや診療科カンファレンスで症例を提示する
  12. 初期研修を指導して研修医の症例発表をサポートする

6. カンファレンス/症例検討会等

種々のカンファレンス、症例検討会、講演会に参加し、発表担当や協議に積極的に加わり、研鑽を深める。
当院内科系でのカンファレンス/検討会/講演会は以下のものがある

病院全体

  • 倫理講演会:出席は義務
  • 感染防止講演会:出席は義務
  • 医療安全講演会:出席は義務
  • 病院CPC(臨床病理検討会) 原則奇数月の第一月曜日
  • 病院MDCC(多職種によるインシデントカンファレンス)
  • その他の医療講演会
  • 地域医師会との合同症例検討会(全科、循環器科、消化器科、呼吸器科)
  • MTB;Musashino-Tumor-Board (多職種による癌症例検討会) 水曜日17:30〜

内科全体

  • 月曜日18時からの内科カンファレンス;症例検討会
  • 毎月1回月曜日18時からの内科インシデントカンファレンス
  • 月曜日朝の新患カンファレンス

各診療科

  • モーニングカンファレンス
  • 診療科症例検討会
  • 診療科別の抄読会
  • 他診療科との合同カンファレンス
  • 領域毎の地域医師会との症例検討会/研究会

初期研修医の勉強会 講師としてアドアヴァイザーとして受講生として参加

  • 火曜日 18:30〜 救急救命科主体の勉強会
  • 水曜日 18:30〜 感染症科主体の勉強会
  • 木曜日 18:30〜 総合診療科主体の勉強会
  • 金曜日 18:30〜 初期研修の症例検討会

7. リサーチマインド/学術活動の研修計画

当院には、比較的珍しい症例が多数入院する。そのため、症例から学ぶ点が沢山ある。稀な症例を診療しながら、一方で学術論文を調べて知識や最新の知見を学ぶ。さらにそれを診療科の中で公表してチーム全体の理解を深める努力をする。
稀な症例や教育的な症例は、積極的に学会や研究会で発表し、論文化する。
多数の症例が入院するため、症例をまとめて検討し、学術的な考察を加えて内科学会、各専門領域の学会、研究会などで積極的に発表する。当院内科系診療科は学会や研究会の発表も非常に盛んで、若手医師の発表機会が非常に多い。多忙な日常臨床の中で症例をまとめたり、発表したりする事は大変重要な訓練でもある。自分の考えをまとめ、さらに文献的な考察を加えて検討する、専門診療科の上級医や他診療科からの指摘をうけて再考する、そして他人にわかるように発表する事は極めて重要である。
また、腫瘍科志望者の場合には、専攻医の3年目に高度専門施設であるがん研有明病院総合腫瘍科に出向して、多数の症例の診療を見て研修する、最新の治療法や知見を研修する、新薬の治験の動向やその進め方などを学ぶ道も用意してある。

8. 地域医療研修について

優れた内科専門医になるには、急性期医療や高度専門医療のみに精通しているだけでは不十分である。急性期の総合病院の医師は、慢性期の患者を指導したり、退院した患者のその後の様子を観察して適切に対応する事は不可能である。
>そのため、本プログラムでは専攻医2年目に6ヶ月間、地域の医療機関で研鑽を積む。桜町病院内科、あるいは調布東山病院内科で、急性期病院から転院して来る入院患者の診療、退院して地域に戻る患者の在宅調整の研修、地域の往診医や訪問看護師と協議して家族のレスパイトケアの研修など、急性期病院では学ぶ事が出来ない領域の研修を行う。
地域研修中に判断に迷う症例に遭遇した際には、随時基幹病院の専門医に相談する事が可能であり、緊急性に乏しい場合には電子メールで繋がっており、電子媒体を通じたコンサルトも可能である。

9. 研修の評価時期と評価法

研修評価は随時評価、形成的評価および総括的評価を行う

1) 随時評価

指導医、研修委員会、プログラム管理委員会は日本内科学会専攻医登録評価システムを用いて専攻医の研修状況を把握し、評価を行う。

2)形成的評価

専攻医と共に日常的に臨床を行う上級医、指導医により日々評価する。
患者カンファレンスでの発表・発言内容、診療録記載内容、入院要約記載、初期研修医を指導する様子などから、医師としての臨床能力を多方面に亘って総合的に判断できる。上級医は適宜専攻医にフィードバックを計る。
さらに、専攻医自身のWeb版研修手帳によって、指導医も日常的に評価できる。

年3回程度専攻医研修委員会を開催して、初期研修医、各科指導医から研修の進捗状況や評価を聞き、専攻医にフィードバックをする。

3)総括的評価

1年に1回原則11月頃にプログラム管理委員会を開催し、上級医、指導医、初期研修医による会合を開催して、専攻研修の進捗状況を確認する。経験症例数や病歴要数、医療倫理・医療安全・講演会・CPC・JMECCなどの受講状況も確認する。さらに研修態度も含めた360度評価として、看護師、薬剤師、検査技師、放射線技師、クラークなど多数のスタッフに加え、可能な範囲で受け持ち患者や家族にもアンケートの形で評価をしてもらい、プログラム責任者からフィードバックをする。
2年目の研修中の11月にはプログラム管理委員会で、経験すべき症例が70疾患群200症例に近づいている事、病歴要約29例が翌2月までに完成する見込みかを確認し、不足領域/症例があれば、当該研修部門と相談する。
3年目の11月には到達目標を達成しそうで、翌年に専攻医研修が終了できそうかの確認を行い、本人へもフィードバックを行う。

10. 研修終了認定

研修終了認定に関しては、当院の研修管理委員会で確認する。

認定条件は以下のごとく

  • 内科学会の指定する70疾患群、200症例を経験している
  • 内科のWeb研修手帳で研修が十分到達できている
  • 内科学会提出の退院要約がアクセプトされている
  • 医師のみならず、看護師/技師/事務職員/患者/家族などの360度評価で人格も含めた問題点を指摘されていないかの確認
  • JMECCの受講歴の確認
  • 病院CPCの出席の確認
  • 理講演会、感染防止講演会、医療安全講演会の出席の確認
  • 毎年の研修員会で指摘された改善点がある場合、その課題が改善された確認

上記について、研修委員会で確認し、委員全員の了承が得られた専攻医を研修修了と認定する

11. サブスペシャリティ研修に関して

当院の内科専攻医研修では、1年目2年目に70疾患群/200症例に到達可能な見込みがある専攻医においては、3年目に内科のサブスペシャリティ研修を可能とする。
内科専門領域の研修は、当院専門診療科またはがん研有明病院総合腫瘍科で各指導医の元に研修する。その経過は研修委員会に報告される。

12. 研修管理委員会について

研修管理委員会は基幹病院である武蔵野赤十字病院の他、連携研修施設である桜町病院、調布東山病院、がん研有明病院にも設置される。開催は各施設に委任されるが、武蔵野赤十字病院では原則として年に3回の開催を予定し、うち1回は連携施設の委員も出席して討議する。
管理委員会での討議内容は、各施設、各部門から専攻研修の状況、問題点、改善案などを報告、研修環境などについて、さらに専攻医個人についての評価、改善点についても討議する。また、基幹施設、連携施設において研修環境に変化があれば報告してもらい討議する。
尚、会議には専攻医の各学年の代表も参加する。

武蔵野赤十字病院専攻医研修管理委員会

統括責任者内科副院長安藤 亮一
プログラム管理責任者 臨床研修部長田 薫
副委員長内分泌代謝科杉山 徹
副委員長膠原病・リウマチ内科 高村 聡人
事務局代表教育研修推進室大屋 誠一
委員 循環器内科
消化器内科
腫瘍内科
看護部
薬剤部
臨床検査技師
診療放射線技師
宮本 貴庸
黒崎 雅之
中根 実

連携施設

青梅市立総合病院リウマチ・膠原病内科長坂 憲治
調布東山病院病院長須永 眞司
桜町病院副院長瀬口 秀孝
がん研有明病院総合腫瘍科部長高橋 俊二

13. 指導者研修について

内科学会作成の指導医の手引きを活用する
当院で2002年より実施している指導医講習会を受講する

14. 専攻医の研修環境/労働環境

労働基準法や医療法に基づいた勤務体制を構築することを原則とする。
専攻医1年目は武蔵野赤十字病院内で研修し、2年目は連携病院である桜町病院や調布東山病院での半年間の研修を原則とします。
連携施設ではその施設の就業規則に則って就労しますが、施設間の就労条件が大きく異なることがないよう配慮します。
研修施設ではすべてインターネットで学習したり検索したりする事が可能である。基幹施設である武蔵野赤十字病院にはストレスの調査メンタルストレスなどに対応する産業医がおり、ハラスメント委員会も整備されており、活用可能な環境である。

15. 内科専攻医研修プログラムの改善方法

本研修プログラムをより有益で実効性の高いものにするために、以下のことを実施予定である。

  1. 専攻医による指導医の評価と改善要望の把握
  2. 専攻医によるプログラムの評価と改善要望の把握
  3. 指導医よるプラグラムの評価と改善要望の把握

    年3回開催する専攻医も参加する研修委員会での意見聴取の他、プログラム員への直接の要望や、各診療科上級医、院内外のスタッフの意見を参考にして、委員間で討議する。その上で、課題を以下のごとく分類して対応する。

    • 直ぐに実行可能な課題
    • 月単位や年単位で準備が必要な課題
    • 各施設内で改善可能な課題
    • 複数施設に関連する課題

    などにわけて、それぞれ対応する。

    • 万が一、解決困難な問題が派生して専攻医の研修に影響がでる場合には、日本専門医機構内科領域専門機構に相談するものとする。
    • 指導医、研修委員会、プログラム管理委員会は日本内科学会専攻医登録評価システムを用いて専攻医の研修状況を把握し、プログラムが円滑に行えているかを評価する。
  4. 専攻医研修に対する監査(サイトビジット)・調査の対応

    武蔵野赤十字病院研修管理委員会は日本専門医機構内科専門領域研修委員会からのサイトビジットを受入れ、監査の結果の評価に応じた改善の努力をいたします。

16. 内科専門研修の休止・中断、プログラム移動について

専攻医が内科専門研修続行が不可能な状況になったり、他の基幹病院に異動をせざるを得ない状況が生じた時は、研修委員会が責任をもって対応します。当院在院期間の研修評価をきちんとして、異動後の他施設で継続的研修が出来るよう配慮します。
妊娠および病欠による研修中断期間は、原則として日本専門医評価機構の定める4ヶ月以内であれば、経験症例が規定に達していて、管理委員会が研修態度その他責任をもって専攻医研修が十分と認めれば、追加研修期間は設けない。
追加研修期間の給与等待遇に関しては個別に対応予定だが、当院内科は医師数が多く、内科系専攻医を合わせて70〜75名になるため、増員は不可能となる。そのため、研修期間の一年延長などは翌年の専攻医枠を削る必要に迫られる結果となる。したがって、安易なプログラムの延長は認めない。

17. 武蔵野赤十字病院内科専攻医研修施設群の資料

表1 各研修施設の概要(2016年2月のデータ)

 病院病床数内科系病床数内科系診療科数内科指導医数総合内科専門医数内科部検数
基幹施設武蔵野赤十字病院61122411203114
連携施設青梅市立総合病院5622708211613
連携施設がん研有明病院70023510332012
連携施設桜町病院199484220
研修施設合計159356733625128
 

表2 各内科専門研修施設の内科専門領域研修の可能性

 武蔵野赤十字病院青梅市立総合病院調布東山病院桜町病院がん研有明病院
総合内科 
消化器内科 
循環器内科 
呼吸器内科  
腎臓内科  
内分泌代謝科  
脳神経内科   
リウマチ膠原病科   
血液内科  
腫瘍内科   
感染症科    
緩和ケア内科  
アレルギー   
 
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