呼吸器外科
診療科の紹介
呼吸器外科医3名の体制で、手術治療を中心に診療を行っています。
呼吸器外科は、胸部臓器に対する外科的診断、治療を行う専門診療科です。具体的には原発性肺癌、転移性肺癌、炎症性肺疾患、気腫性肺疾患 (気胸) 、縦郭腫瘍、胸壁腫瘍、膿胸、胸部外傷などの疾患が対象です。
呼吸器外科領域で手術を受けられる方の95%程度には、低侵襲な内視鏡下での手術を提供しています。内視鏡手術には胸腔鏡下手術 (VATS: Video-Assisted Thoracic Surgery) とロボット支援下手術(RATS: Robot-Assisted Thoracic Surgery)があり、個々の患者さんの状態に応じて適応を判断しています。
以前は、呼吸器外科疾患の術式は20cmほどの皮膚切開を行い、骨を切離して行う開胸手術が一般的でした。胸の中を直接医師が見て手術するために肋骨の間に開胸器という器械をかけて大きく広げる必要があり、痛みが出やすく術後の回復に時間がかかることがありました。これに対して内視鏡手術ではカメラを用いて胸の中を観察するために創を大きくする必要がなく、1-4cmの皮膚切開で肋間を広げずに手術を行うことができます。
胸腔鏡下手術は腋窩に3-4㎝の皮膚切開と、ほかに2㎝の切開を1-2か所おいて行います。対象疾患の限定はなく、呼吸器領域の多くの病変に対して行っています。ロボット支援下手術は、現在は肺腫瘍に対する区域切除と肺葉切除、縦隔腫瘍に対する手術に保険適応があります。腋窩(縦隔腫瘍では心窩部など)に3-4cmの皮膚切開と、ほかに8mm-1.2cmの切開を3-4か所おいて行います。手術操作に用いるロボットアームが多関節になっており、人の手のように動くことで、通常の胸腔鏡下手術では困難な操作が可能となります。肺癌など、胸腔鏡下手術、ロボット支援下手術のいずれも保険適応となっている疾患に対しては、それぞれの手術のメリット・デメリットを考慮して術式を選択します。詳しくは外来担当医にご確認ください。
内視鏡の手術を行うことで、従来の開胸手術と比較すると、美容面の改善や痛みの軽減、入院期間の短縮が可能になります。原発性肺癌に対する標準的治療である肺葉切除や区域切除を行った場合で、術後おおむね5-7日程度で退院可能となります。
大きな腫瘍や、複数の臓器にまたがるような腫瘍の場合には、他診療科と協力して、化学療法、放射線療法を組み合わせて行う手術や、開胸して他臓器を一緒に合併切除する手術も行っています。呼吸器内科、放射線科と定期的にカンファレンスを開催し、個々の患者さんにとってベストとなる治療法を選択できるよう、相談しています。
認定施設
- 日本呼吸器外科専門医認定機構関連施設
- 日本外科学会専門医制度修練施設
- 日本呼吸器内視鏡学会関連認定施設
- 日本呼吸器学会認定施設
初診の方は、おかかりの医療機関の紹介状と受診日の事前予約が必要となります。
スタッフ紹介
常勤医師数
3名
部長:籠橋 千尋 (かごはし ちひろ)
専門領域
- 呼吸器外科
資格等
- 日本外科学会専門医
- 呼吸器外科専門医 (呼吸器外科専門医合同委員会)
- 日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医
- 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
- 胸腔鏡安全技術認定取得
- ダ・ヴィンチcertificate取得
呼吸器外科では、肺・縦隔に発生する腫瘍性疾患、感染性疾患、気胸などに対する外科的治療を行います。 完全胸腔鏡下・ロボット支援下の、小さな創での安全な手術を基本としています。 個々の患者さんの状態、病変に応じた最適の医療を心がけております。
医師:角田 悟 (かくた さとる)
専門領域
- 呼吸器外科領域
資格等
- 日本外科学会外科専門医
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
医師:青木 美智 (あおき みち)
専門領域
- 呼吸器外科領域
資格等
- がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了
可能な検査・治療・器械について
- 肺癌:胸腔鏡下肺葉切除、区域切除、部分切除、他臓器合併切除 (気管、気管支、血管、横隔膜、胸壁など) 、集学的治療 (化学療法+放射線治療⇒手術)
- 自然気胸:胸腔鏡手術、保存的治療 (手術以外)
- 縦隔腫瘍:胸腔鏡手術、定型的手術
- 感染症:膿胸、真菌、非定型抗酸菌症などの手術
- その他呼吸器外科一般手術
受診するにあたってのお願い
手術を受ける方には直接よくご説明いたしますが、安全に手術を受けていただくには次の点にご注意下さい。
- 禁煙:少なくとも1ヵ月前からの禁煙をお願いします。喫煙を継続することで痰が増え、術後肺炎の原因になるためです。
- 薬のチェック:血液をさらさらにする抗凝固剤や血小板機能抑制剤など手術前に中止しなければならない薬がありますので、普段どのような薬を服用しているかお知らせ下さい。
- 糖尿病や狭心症などの管理:病態によっては手術中や手術後の合併症の発生率が高くなります。かかりつけ医での治療内容などをお知らせください
診療実績
年間手術症例数の推移
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
原発性肺癌 | 89 | 104 | 108 | 105 | 98 |
転移性肺腫瘍 | 10 | 11 | 11 | 14 | 14 |
縦隔腫瘍 | 15 | 10 | 13 | 13 | 16 |
気胸 | 48 | 28 | 36 | 40 | 33 |
その他 | 29 | 30 | 25 | 22 | 19 |
全手術数 | 191 | 183 | 193 | 194 | 180 |
臨床指標
手術成績:原発性肺癌 非小細胞肺癌完全切除例367例 (1998年4月から2010年12月まで) の2011年3月31日現在の生存率および生存曲線を示します。
※非小細胞肺癌:予後や治療方針の異なる小細胞肺癌を除いた肺癌を非小細胞肺癌といいます (腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌など) 。
Ⅰa期 | 87.50% |
Ⅰb期 | 76.80% |
Ⅱ期 | 63.40% |
Ⅲ期 | 45.50% |
Ⅳ期 | 0%, 30.3% (4年生存率) |
1994年に全国で切除された肺癌症例 (7408例) の予後が集計され、全体の5年生存率は51.9%、術後病期別ではⅠa期79.2%、Ⅰb期60.1%、Ⅱa期58.6%、Ⅱb期42.2%、Ⅲa期28.4%、Ⅲb期20.0%、Ⅳ期19.3%と報告されています (肺癌.2002;42:555‐566) 。